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外国語学習と年齢の関係

 「大学に入るまで6年間も英語をやってきたのにききとりが苦手」とか、「英語が話せない」という話をよく聞きます。なぜそうなるか考えてみます。

 まずさいしょに、「生きてゆくために」英語だけを使って過ごした時間が、一体どれだけその中にあったでしょうか?英語の授業といっても中高では語彙・文法・読解に重点がおかれているために、日本語を使った授業が多かったのではないかと思います。

 また、何歳ごろから英語を始めたでしょうか?われわれの母語である日本語でも思春期を超えてから接すると、なかなかその方言独特の言い回しやアクセントの克服が容易ではありません。そもそも母語である日本語では聞き取りを「勉強した」という記憶がありますか?こうした「生きてゆくために」必要な能力は無意識のうちに身につくしくみになっているようです。周りを見渡してみると英語の会話で苦労している人は沢山いますが、日本語はほとんどありませんね。

 このような特定能力の発達を可能にさせるタイムリミットを「臨界期」(critical period)と呼びます。「臨界期」は広く動物界でみられる現象で、生存のために必要な能力・習性の獲得を一定期間(数時間から数日程度)の間可能にします。

 たとえば鳥のマガモの赤ちゃんであれば、孵化後20時間以内なら目の前を動くものを親鳥と判断し、あとをついてゆく行動をとります。しかし30時間を超えると、逆に恐怖心から動くものを回避するといわれます。自然界ではこれは死を意味します。

 ヒトの「ことばによるコミュニケーション」能力獲得の場合はもっと長く、何年もかかります。「ことば」自体が複雑なためと、ヒトの成長には時間がかかるためだと考えられています。それでも、一定の年齢(思春期前後といわれています)を超えると新たな外国語や方言が、思うように習得できなくなります。英語で言えば特にリスニングとスピーキングでその傾向が顕著ではないでしょうか。

 逆に、幼少期を英語圏ですごしたひとの中に、まるで英語母語話者のような発音や聞き取りをするひとがいます。しかし、同じように幼少期を英語圏で過ごしても、そうでない人も沢山います。数としてはこちらの方が圧倒的に多いと思います。

 私はかつて帰国子女の学校で教えていた時に、同じ経験をしてどうしてここまで人によって違うのだろう、と不思議に思いました。それが今日に至る研究のテーマになっています。

 さらにご興味のある方は拙著『英語学習と臨界期』をお読み下さい。
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小学校英語教育活動の長期的効果について

 また早期英語教育研究の一環として、日本の早期英語教育(小学校英語活動)の児童・生徒に対する技能・情意面での効果を、定点継続で質・量的に検証した本も2015年に出版しました。院生等で早期英語教育、統計に興味のある方におすすめです。
 ご興味のある方は、拙著 "Long-term Effects of Learning English"をお読みください。
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外国語学習と年齢の関係

 上記の研究を進める中で、外国語学習に対する諸外国の教育政策・制度を調べたものを共著で出版しております。各国の外国語教育政策の理念と教員養成のあり方、教員の社会的地位などを20以上の国について調べました。
 ご興味のある方は「国際的に見た外国語教員養成」をお読みください。
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外国文化を学ぶアクティビティー

毎年、龍谷大学の里井教授が中心となられ、関西の数校の大学生に声をかけてテーブルマナーセミナーを開催、中世からの西洋歴史文化に根ざした約束事を学びます。
(Table manner seminar):クリックで拡大)
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