英語の勉強方法


1.大学の英語授業とは

〜「読み」,「書き」,「話し」,「聞く」の4技能をバランスよく伸ばす〜


 中学、高等学校時代の英語と大学の英語の授業は同じなのかと言う質問をしばしば受けます。その答えはイエスでもあり、ノーでもあります。同じところは、学習する言語が英語だということ。違う点はもはや受験を目指した英語の勉強ではないと言うところです。英語は外国語の一つであり、母国語ではありませんから、自然に上手くはなりません。学習によって4技能の習得をおこなわなければなりません。
すなわち読み、書き、話し、聞く(reading, writing, speaking, listening) 能力をバランスよく身につけねばならないのです。
中学、高校時代の授業の中にも一応これら4主要素が織り込まれてはいるのですが、受験を控えて、単語熟語の暗記、文法訳読に力が注がれてしまいます。もちろんこうした勉強が英語の基礎力を培う上でたいへん大事であるのはいうまでもありません。

 もったいないはなしですが、こうして英語のレベルアップの準備をして入学したあと、それまでの受験勉強の反動か、英語から離れてしまったという人の話しをよく聞きます。授業の予習もほとんどせず、高校の時より英語に費やす学習時間が大幅に減っているといいます。この人達は、せっかく自分の前に大きな世界が開きかけているのに、宝の山を前にして歩みを止めてしまったようなものです。このままでは受験や高校時代にせっかく身につけた単語力や文法力も次第に落ちてしまうでしょう。ではこの語学の新たなステップアップの機会をどう利用したらいいのでしょうか、簡単に例をいくつか挙げて考えてみましょう。


2.誰でもわかる大学の英語の予習方法

〜まず全体の意味をつかむ〜


 大学の英語の授業の心構えですが、もはや受験勉強でやったようにがむしゃらに単語や熟語を覚えるとか、一字一句を正確に日本語に訳す、ということから離れてほしいと思います。
大事なことは英語を英語で読む感覚、センスを養うことです。
わからないところは前後関係や常識からできるだけ判断しましょう。このことは読むときも聞くときも一緒です。要するに完璧にわからなくてもいいのです。7〜8割、時によっては半分程度理解できればよい位の気持ちでどんどん先に進みます。

例えば次の様な文章の一節を読んで何を想像しますか?テキストから実際に抽出してみました。まずはしばらく読んでください。
"The origin of everything we see about us. The finality of death and how almost magical it seems in the real world as opposed to the world of celluloid and flickering shadows."

先ず最初に、「これは何か難しいことを言っているな」と思った人は正解です。状況がよく把握できています。それでは次に、この話は一体何についての話でしょうか。「よくはわからないが、人生とか死とかの問題だ」。その通りです。哲学的ですね。さて、そうはいっても文章の最初は気になります。 The origin of everythingって一体なんでしょう。そう、単語から想像できませんか?「全てのことの起源」、つまり「万物の起源」ですね。その次の文のfinalityはどういう意味でしょうか。よく見るとfinalという単語に似てますね。そうなのです。「最後であること」、つまり「究極性」とでも訳したらいいでしょうか。実はもうここまででこの一節の解釈の半分以上ができています。ただ、最後のcelluloid and flickering shadowsってなんのことかわからない。それでよいのです。これは英語母語話者でも前後の文章をみないと解釈できないかもしれません。でもその前の熟語 as opposed toは、「〜に対して」でしたね。記憶にある方もおられると思います。

 さて、次に全文の情景を今得た断片的な情報から頭の中に描いてみます。つまり、これは何か哲学談義で、主人公が「万物の起源」や「死の究極性」が、現実世界ではいかに不可思議なものか考えている場面です。この状況がわかればこの文の解釈は十分で、お釣りがきます。無理に解釈しなかったcelluloid and flickering shadowsは「セルロイドで(できたフイルムの)影がちらつく世界」、つまり「映画の世界」を表現しようとしているのです。

 こうして英語によるイメージで前に進むのが大学レベルのリーディングです。途中でわけが分からなくなったり、つじつまが合わない箇所があったらそれはあなたの解釈がまちがっているせいかもしれません。英語でも日本語でも前後をよく読めば、筋の通らない文章はめったにありません。でもそんな場面になってはじめて辞書を引いてみましょう。何から何まで、辞書にかじりついて調べるというのでは英語が嫌になってしまいますよね。辞書を引くのは最小限がよいのです。その代わり、少数を納得のゆくまで調べましょう。

テキストの予習範囲を、その話の内容が具体的にイメージできるように準備して授業に出席してください。そしてとにかく量をこなしてください。授業の英語では少なすぎると思うようになれば本物です。
訳出にこだわる人は、それでもいいですから、書く時間がなければ、英語の部分をどんどん口頭で日本語にアウトプットする練習をしましょう。これなら電車の中でテキストを開けながらでも可能です。そしてどうしても解釈できないところを中心に下調べをしましょう。「辞書を使う箇所を絞り込む」のがよい英語の勉強法です。あとは実際の講義で自分の解釈が正しいか、チェックします。はじめから欲を出さずに7〜8割当たっていれば「よし」として下さい。こうして勉強を進めれば、難解なテキストもやがて読みこなせるようになります。
時間がない時は、テキストにざっと目を通してわからない個所に下線を引いて授業に出るだけでもずいぶん違うものです。


3.自分でできる英語力アップ

〜シャドーイングと海外留学〜


 実践的な英語を学びたい。英語の発音をよくしたい、また聞き取りの力を伸ばしたいという人にぴったりなのが、いわゆる
「シャドーイング」という練習方法です。
プロの通訳も行っている練習法で、発音、リスニングのスキルアップにとても効果があります。

 やり方は、例えばDVD,インターネットなどから自分の興味やレベルに応じた英語の会話を録音します。練習時にはそれをヘッドフォンやイヤフォンで聞きながら、コピーするように自分の口元で音に出して真似します。肝心なことはテキストを読むのではなく、とにかく聞いたとおりの音を同じ速さで、同じ抑揚で再生するのです。どうしても音がとれないところや、早すぎてついていけないところは無視してかまいません。これをできれば毎日繰り返します。自然と口が英語の発音をするように準備されてきますし、今まで聞き取れなかった音が聞き取れるようになります。1回の録音は5分以内がよいと思います。それを1分程度のまとまりに分け、少しずつ続けます。さまざまな人の話をシャドーイングしてみましょう。映画やニュースだけでなく、Actors Studioなどに登場する俳優や女優さんへのインタビューでもけっこうですし、アニメでも結構です。その人になったつもりで表情まで真似して下さい。


4.これからの時代を生きるために大事な二つのキーワード

〜コンピューターと英語〜


 世の中はすさまじいスピードで、ますます情報社会化しています。情報に乗り遅れることは、すなわち他者の後塵を拝することになります。大学生になったら、このことを念頭に置いて真っ先に次の二つのことに精進しましょう。
 キーワードはコンピュータ、そして英語です。
 まずコンピュータですが、E-mailでの添付のやりとりが可能なこと、Office等のワープロ、表計算、プレゼンのソフトを使いこなせることはいくつかの授業で必須条件となっています。つまり先生の中には課題をMoodleで添付配布・提出させる方もおられます。さらにプロジェクト形式で、プレゼンソフトを使って動画や音声にテキストを組み合わせて課題を提出させる授業もあります。卒業研究を行うときに丁寧にワープロで仕上げ、必要な部分に図表もきちっと挿入しなければ受け取ってもらえないことは常識です。こうした誰もがこなさなければならないことを始めるのに早いに越したことはありません。インターネット環境に関しては入学後学生一人一人にログインID、パスワード、与えられます。ポータルと併用して学内のコンピュータを使ってスキルアップをして下さい。

 さてもう一つのキーワードである英語ですが、どう精進するのか?答えは至って単純明快です。
自分の英語力を客観的に知るため、TOEICやTOEFL、英検などの英語力指標テストを定期的に受験しましょう。
そして自分の弱点を知ることが第一歩です。

 TOEICは最初は300点台から始まるかも知れませんが、受験するたびに要領がわかり、しっかり勉強すれば点数は確実に向上します。大事なことは、上述のリスニングの勉強にプラスして「語彙」を増やすことです。時事記事のスレッド読みは特に効果があります。こうしたテキストを中心に多読を通じて語彙・コロケーションの知識を高める努力を続けることです。今まで教えた学生さんでTOEIC900点を突破した人や英検1級合格を果たした人も少なくありません。

 似たようなすべて英語で行われるテストにTOEFLがありますが、こちらは北米に留学を希望する人が受験するものです。TOEIC と問題形式がやや似ているので、TOEICをやっておくといざというときに役に立ちます。

英検にしてもTOEICにしても、何回も受験することが大事なのです。
最初の1〜2回は、傾向と対策を把握するための練習と割り切りましょう。最低でもそれぞれ数回は受験しないと合格しませんし、納得のいく点数は出ません。
3年、4年生になってからでは遅すぎるのです。21世紀を乗り切ってゆくために、この二つは車輪の両軸の様なものです。新入生の皆さん、早速手をつけましょう。